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2005年09月 アーカイブ

2005年09月02日

インナーシティの孤立とハリケーンカトリーナ

ニューオーリンズ市内に取り残された人びとーーインナーシティで孤立しているひとーーは、圧倒的、黒人を初めとする「貧困層」である。

さて、あなたならどうしますか?
・市長を初め行政機関の長が避難命令を出した。
・公共交通機関はすでに運行中止。
・車を持っていない、または悪天候のなかでも無事に運転できるほど整備された車を持っていない。

市内に残るしかない。

この情況は簡単に推測できる。なのに、州兵の出動は、したがって、ハリケーンが通ったあとではなく、通る前に行われるべきだった。

残骸をよく見てほしい。アメリカなのに、多くが「木造」である。これは、いわゆるshotgun houseやshack、あえて日本語にすれば「掘っ立て小屋」である可能性が非常に高い。

また、別荘地にあるコンドミニアムには保険がかけらているので立て直されるのも早いが、「掘っ立て小屋」にしか住めない、避難する足のない人間がどうやって住宅の保険に入っているだろう。

これは、したがって、巨大な人災である。そしてその被害者は貧困層、都市や南部貧困層に占める黒人の率は高い。

ですから、募金をお願いします。
http://www.redcross.org/

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2005年09月05日

2Pac 狙撃事件の捜査再開

20050905tupac.jpg
連邦司法省筋の情報によると、1994年ニューヨーク市のスタジオで起きた 2Pac 狙撃事件の捜査が再開されることになった。

これまで、彼が殺害された1996年ラスヴェガスの事件に関しては、捜査が繰り返し行われてきている。また、誰が犯人であるかを独自に調査した著作も多い。

今回は、この96年の事件の発端となったとされている94年の事件が捜査の対象。目的は、多くの場所で語られているこの二つの事件に関連性があるかどうかであり、わけても、現在 The Game のマネージャーとなっているジミー・ヘンチメン・ロズモンドの役割に捜査の焦点があたることになるらしい。

これに対し、ロズモンドはこう答えている

「スタジオでの狙撃事件から11年、Tupacが死んでから9年も経つのに、いまだにそんなわけのわからないうわさ話のなかで私の名前があげてこようとは恥を知れと言いたい。だが、これまでだって、2つの事件の捜査には全面協力してきたし、実際にそのために金をつぎ込みさえしたんだ。真実が解明されるべきだと思ったから。Tupac は良い友達だったし。(ムショにいるやつらも含め)その辺をうろついている人間が、私の人格を汚し、ヒップホップ界の悪役にしようとしてる、これは悲しいことだね」。

なお、2Pac は、ジミー・ヘンチメンのことも、彼のラップのなかで酷評していた。ヘンチメンに嫌疑がかかったのも無理はない。

しかし 2Pac が亡くなってから9年も経過してしまった。時の経過とともに、真実が解明される確率は低くなる、これはまちがいない。長い時間が経ったからこそ、事実へ接近することが可能になったということもあるが、そのときこそ、われわれ歴史家が登場する時だ。

2005年09月06日

何もわかっていないジョージ・W・ブッシュ

ブッシュ大統領がニューオーリンズを訪問している模様が先程NHKで放送された。曰く

"Let the people get BACK on your [sic] feet"
(ちなみに、これがいわゆるブッシュ語、英語では、ご存じのように、この掛かり受けでは、on their feetになる。この大統領は本当にイェール大学卒なのだろうか?)

この人はやっぱり何もわかっていない。

上の表現のon one's feetが自立という意味は承知の上で言う。

「自らの足」立つ姿に「戻る」???

被災者には避難する「足」がなかったのだ。あらゆる機関がprivatize民営化された結果、彼ら彼女らからには、天災を逃げる「足」がなかったのだ。

「自らの足で立つところに戻す」。虚言である。彼ら彼女らから足を奪ったのは、誰だ!

彼ら彼女らが、on their feetで生きていく術を立ったのは、共和党保守派→民主党ニューリベラル→共和党ネオコンサーヴァティブと続いた政権である。

福祉国家にテロ攻撃をしかけたのは、ジョージ・W・ブッシュ、とその郎党である。

Mobilze Black Power Agaist Conservative Onslaught!

イライジャ・カミングスを初めとする黒人連邦議会連盟(Congressional Black Caucasus)のメンバーたち、さらにはヒップホップスターKayne Westがブッシュ政権の批判を公言し始めた。

わたしは、受動的なただ単なる被害者として黒人を描くことは避けてきた。彼ら彼女ら(そしてわたしたち)は歴史を創り、社会を創り、世界を創る主体だからだ。

ニューオーリンズが始まる世界創り、現在は詳報を収集中であるが、逐一ここ、もしくは

http://www.fujinaga.org/

で報告していく。

conservative onslaughtに対する反撃は、これから始まる。

2005年09月07日

ジェシー・L・ジャクソン議員のブッシュ批判

ハリケーン・カトリーナに対するブッシュ政権の反応に対し、下院議員のジェシー・L・ジャクソンが鋭い批判を展開した。曰く

「多くの黒人は、彼ら彼女らの人種、資産状況、そして投票行動がハリケーンへの反応を決めた要因であると感じています。それが事実だと断言はできませんが、多くの貧しい人たちを、これまで貧困からの脱出方法を提示せぬまま放り出してきたことはあきらかです」。

この発言には、人種、階級、支持政党といった色々な要素がひとつにまとめられている。それゆえ、この批判は重いと感じられる。

天災が、ある特定の「人種」を標的にして起きるということはありえない。とすれば、今回、あまりにも不釣り合いに黒人の被害者が多いのは、それは「人種」だけが原因ではないからだ。今回のケースでは、経済環境という要素が加わったのは明らかである。

さらに、ジョージ・W・ブッシュは、前の大統領選挙で黒人票の11%としか獲得できなかった。前回より3%ほど伸びてこの数値である。したがって、もはや再選が不可能な彼にとって、黒人貧困層のための政策をするインセンティヴは少ない。

どこからどのように考えても、これは人災である。

カニエ・ウェストの発言、なぜか検閲される

ラップ・シンガー、カニエ・ウェストが行った、ハリケーン被害に対するブッシュ政権の行動批判が、アメリカのテレビネットワークの一部で検閲にあい、放送されなかった。

彼は、こう語った。

「ジョージ・ブッシュは黒人のことなんて考えちゃいない。だいたいメディアが俺たち黒人を描く姿だって大嫌いだ。黒人家族が歩いていたら、略奪者集団呼ばわり。白人家族だと、食べ物に困っていると言う。救済活動が始まるまで5日もかかったのは、被害者のほとんどが黒人だったからだ。こうやって批判をしている俺にしても、偽善者かもしれない。だって、テレビを観ていて辛くなるばかりだから、現実から目を逸らしてしまったんだ。それに、寄付をする前に買い物にも行った。そんな調子でも、いまマネージャーを通じて、俺の財布からいくら出せるか、その最大限の額がいくらになるのかを調べてもらっている。つまり、赤十字はいま最善を尽くしているだろう。その一方で、救助に使うべき人びとがいままた別の戦争を起こそうとしているんだ、その許可を貰っているんだ。俺たち黒人を撃ち殺す」。

この発言の最後の部分は、治安回復のために、政府が窃盗犯射殺命令を出したことに触れている。

それにしても、自らを「偽善者」だと認め、良心の呵責に苦しんでいるこの発言は、ひとのこころをえぐりとっている。その刃の鋭さに恐れをなしたものがいるのだろう。さもなければ、なぜこの発言が放送禁止になるのかわからない。

ハリケーン・カトリーナは人災である−−実数値から見よう

ハリケーン・カトリーナが起こしたニューオーリンズでの災害は、人災である、それを示す明確な数字を示そう。

2000年の時点で、国勢調査を行った連邦政府には、このような数値が手許にあった。

20050907katrina.jpg1.約48万人のニューオーリンズ市民のうち、連邦政府が定めた貧困者のカテゴリーに入る人間の人種別率は以下の通り。

    黒人:35%
    白人:13.7%

別の計算を用いて率を出すとこうなる。28%のニューオーリンズ市民が貧困層に属するが、その内黒人が占める率は、84%に達する。(ちなみに、全米の人口に占める黒人の比率は約12%)

2.さらに貧困者のなかで、車を所有していない家庭に住むもののは

    黒人:2万1千人
    白人:  2千人

とくに、2の数値は、過去、このブログで私が直観的に述べてきたことがあながち当てのない推論ではなかったことを物語る。彼ら彼女らは実際に避難できなかったのだ。

そして、国勢調査局が知っていたことを、ホワイトハウスが知らなかったとどうして言えよう。上の数値とて、筆者が特別なリサーチをして判明したことではない。国勢調査局のウェブサイトに出ており、それは公衆みなに開放されている。


ブッシュ失政を物語る数値は、さらに、

・ニューオーリンズ市が属するルイジアナ州兵の3分の1が、イラク戦争関連の軍事行動に従事していて、災害派遣ができる状態ではなかった。

2005年09月08日

ヒップホップ・アメリカ、ハリケーン被害者救済に動く!

Jay-Z が、カニエ・ウェストの擁護に出た。

ビルボード誌の取材に答えた彼は、検閲を受けたカニエ・ウェストの発言に対し、「ウェストを100%支持する。ここはアメリカ、言いたいことは何だって言う権利がある、言論の自由は俺たちの権利だ」と述べた。

そしてウェストの発言に援護射撃。曰く「ほんと萎えてしまうよ、こんなことがアメリカで起きるなんて。『いったいなにが起きているんだ What's Going On?"』と思うだろ。なんで反応がこんなに鈍感なんだ。さっぱり理解できない」。

アメリカの大都市の通りに何日も死体が放置されている、まさに「萎えてnumbing」しまう事実だ。このようなことが続けば、きっと人間は無感動(numbing)になる。

だから、現在、彼は、何とパフ・ダディと、ハリケーン被害者のなかでも黒人被害者救済を目的とした音楽イヴェントを協議中だと言う。

これは、ある特定の人種を救済の対象としていることで、人によっては「偏狭だ」と批判するかもしれない。しかし、白人にコーポレート・アメリカがついていて、メディアがそれを支援しているなら、黒人にはヒップホップ・アメリカがついている、わたしはそう思いたい。きっとサッチモも喜んでいるだろう。

ところで最後になりましたが、ニューオーリンズの観光名所にもなっている、ジャズ好きなら一度は訪れる場所、Preservation Hallが救済基金を設立しました。少しでも、募金、よろしくお願いします。

http://www.preservationhall.com/2.0/

2005年09月12日

第2のゲイリー・グラハム(シャカ・サフォア)をつくるな!

抗議の署名をお願いします。

http://www.iacenter.org/francesnewtoncampaign.shtml

2000年、テキサス州に、まだ未成年のときに殺人罪に問われ、死刑判決を受け処刑されたシャカ・サフォア(ゲイリー・グラハム)という人物がいた。この件に関して、処刑直後にわたしのウェブサイトで特別エッセイを書き、そのとき処刑の決定を下したブッシュ当時テキサス州知事に抗議しようという呼びかけを行った。

なぜならば、官選弁護人が反対証人をたったひとりも法廷に呼ばず、まともな反対尋問もないまま、刑事裁判が結審したからである。

いままたテキサスで、フランセズ・ニュートンという人物が、同じ境遇に立たされている。ニュートンは夫と子供の殺害の罪で死刑判決を受けている。しかし、彼女の場合も、官選弁護人がまともな「弁護」活動をしないまま結審を迎え、その結果、死刑となった。

この件に関し、アメリカ弁護士会や、元連邦司法長官ラムゼイ・クラークらが、再審を要求する運動を行っている。

残念ながらもう時間が残されていない。刑の執行日となっている日は15日。

第2のゲイリー・グラハム(シャカ・サフォア)をつくるな!

抗議の署名をお願いします。

http://www.iacenter.org/francesnewtoncampaign.shtml

このサイトにいけば、事件の詳細が記されていますし、あなたの声を残すことができます。

2005年09月14日

BETがハリケーン被害者支援へ

黒人を主な視聴者としている黒人経営のケーブル局Black Entertainment TV 通称 BET がハリケーン被害者救済のためのチャリティ番組を放送した。番組のタイトルは、「わたしたち自身を救おう」(Save Ourself Relief)。「自分たち」と言っているのは、この天災が人災に転じたために、被害者の多くが黒人になっているからである。

その番組には、約束どおり、Jay-Z と Sean "Diddy" Combs (aka. Puff Daddy)が登場し、番組のなかで100万ドルの小切手を赤十字に手渡した。メアリー・J・ブライジも出演、10カラットのダイアモンドを番組のなかでオークションし、それをすべて寄付。

この番組だけで1000万ドルの寄付が集まった。

番組が放送したのは、このようなチャリティだけではない。ヒップホップの精神そのまま、ストリートから発せられた政権批判が飛び出た。今度はQ-Tip。

彼はこう述べている。「俺たちは、メキシコ湾地域の再建のために基金を作ろうとしているんだ。もともとこの地域は、一級のウォーターフロント地区。だからディック・チェイニー副大統領がそこにいったときピンときたね。アイツには隠れた目的があるんだよ。こんなときに限って、困っている人を食い物にしてやろうというヤツが出てくるんだ。だから、俺たちヒップホップ・コミュニティのメンバーは、その地域の土地が人でに渡ってしまわないように、黒人が持っていたものが他の手に渡らないように、ベストを尽くさなくちゃいけない」。

連邦政府高官、ハリケーン対応の裏側を暴露

すでに日本でも多くのメディアが伝えているところではあるが、災害対策を管轄している部局FEMAの高官が『ニューヨーク・タイムス』に裏側を暴露した。

「わかっていましたよ、バスを使って、ニューオーリンズから避難をさせるべきでした。ハリケーンは巡航ミサイルのようでした。つまり行く方向がはっきりとわれわれにはわかっていたのです。担当部局の人間として、本部にいたものはわたしを含めてみんな、情けなくなってきました。一刻も早く大規模な救助措置が実行に移されなければならない、そんなこと承知していました。しかし、なぜなのかわかりませんが、その措置はとられなかったのです」。

さらに、被害の模様をテレビでみた消防士たちは、ボランティアとしてルイジアナに駆けつけようとした。しかし、FEMAは、彼ら彼女らをアトランタに集合させ、そこでセクハラの講習をしたという。その場にいた消防士は、遅れた時間のぶんだけ人が死んでいるというのがわかった、と『ニューヨーク・タイムス』に語っている。

このFEMAの局長を、ブッシュ大統領は、当初、「すげえ仕事をしている」と絶賛した。そのような大統領も、まことにもってすげえ仕事をしている。FEMA局長のいちばん大きな経歴は馬主団体の会長。それを「抜擢」したのはジョージ・W・ブッシュ。

ハリケーン・カトリーナ〜深まる「人種」対立

20050914katrina.jpg世論調査機関 Pew Research Center によると、ハリケーン・カトリーナへのブッシュ政権の対応、わけてもニューオーリンズでの対応に関し、黒人と白人とで大きく見解が異なることが明らかになった。

被害者がアフリカン・アメリカンでなければ政府はもっと迅速に行動したはずだと考える黒人は3分の2にのぼっている。一方、同じ見解をもつ白人は3分の1に過ぎない。

以下に報告してきたとおり、わたしもこの3分の2の黒人と同じ見解をもっている。

しかし、ここで駄目押しとして付言しておけば、ハリケーン被害自体は天災であり、それゆえそもそも「人種差別」を行うはずがないということ。天災を人災にしたのは、政策だということ。ここを区別することは、やみくもに「差別」の糾弾を行い、そうすることで真の差別が何なのか不明にさせないためにも重要である。

さて、そのようなわたしが、鋭い意見として紹介したいのが、2004年大統領選挙で、そもそも民主党の本命候補だったハワード・ディーン元ヴァーモント州知事の発言である。

彼はこう言っている。

「アメリカは、いくらそれが醜くても事実を直視しなくてはならない。この災害を生き延びたのが誰で、死んだのが誰か、それを決めるにあたっては、肌の色、年齢、経済状況が重要な意味をもったのだ」。

ハリケーンが自然の猛威だけだったなら、肌の色、年齢、経済状況を考えはしなかっただろう。「自然」がこれらを「考える」ことなどありえない。この3つの要素が意味をもったこと、それはこれが人災であるという「醜い真実」を物語っている。

2005年09月15日

ニューヨーク市長選挙で非ラティーノ白人が少数派に

11月に実施されるニューヨーク市長選挙で非ラティーノ白人ーー一般に言う白人ーーが、ニューヨークの歴史上初めて、少数派になる。

これまでずっと過半数を占めてきたいわゆる「白人」の率は、01年市長選で52%、04年大統領選で51%と漸減を続け、つぎには遂に48%になる。

これで過半数以上のブロックを形成する人種、もしくはエスニック・グループは存在しなくなった。

アメリカのいくつかの都市ーーデトロイト、クリーヴランドなど主に中西部ーーでは、1980年に同様の現象が起き、そのときには黒人が多数派を形成した。しかし、ニューヨークの場合、過半数には達しないが、比較多数を構成する集団は、ラティーノになる。

問題はこの「ラティーノ」というカテゴリ。スペイン語を話す中南米出身者を一般的に指示するーーヒスパニックと同じーーであるが、この集団の政治的傾向は著しい多様性がある。たとえばマイアミのキューバ系は共和党の支持母体である。他方、ロサンゼルスのチカノ(メキシカン・アメリカン)は民主党リベラル。

ニューヨークでは、キューバ系でもチカノでもなく、プエルトリカンがこの集団内の多数派であり、事実、民主党候補に指名されたのはサウス・ブロンクス出身のプエルトリカン、フェルナンド・フェレール。

他方、近年の投票傾向は、人種やエスニシティよりも経済的位置によって決まる方向に進んでいるという指摘もある。つまり、住宅所有者であれば、黒人であっても、ラティーノであっても、アジア系であっても、白人であっても、共和党を支持する確率が高まってきているのである。

昨年、ロサンゼルスでは、史上初のチカノ市長が誕生した。他方、ニューヨークの歴史上初めて黒人として市長となったデイヴィッド・ディンキンスは、「最初で最後の」と呼ばれることさえある。

なぜならば、人種、エスニシティ内部での多様性が近年強まっているからだ。事実、ジュリアーニからブルームバークへと共和党市政が続いたニューヨークであるが、黒人からほとんど支持されることのなかったジュリアーニと異なり、黒人のブルームバーク支持者は増加する傾向にある。

もはや白人が多数派でなくなったときにいったい何が起きるのか、これは近未来に起こることの踏まえた仮説として問われてきたことだが、今やそれが現実になろうとしている。

なお、黒人指導者アル・シャープトンは、フェレール支持を表明した。

結果が注目される。

2005年09月16日

フランセズ・ニュートンは処刑されました

20050916frances_newton.jpg抗議の署名をお願いしていましたフランシス・ニュートン処刑の件、残念ながら、抗議運動実らず、現地時間14日午前10時頃に刑が執行されてしまいました。彼女の冥福を祈ります。

裁判所の判断というのは絶対的なものではありません。法律が複雑になり、多くの市民がその細部を熟知できない現代社会にあっては有能な、もっと的確に言えば、自分の利益になる弁護士をいかに捜すかが、極めて重要な意味をもってきます。

別にこれにたいそうな知識はいらないはずです。テレビ番組『行列のできる法律事務所』を一回でも見ればわかる通り、弁護士の見解、法律のエキスパートの見解でも、かならず違っている。とすれば、いかにして、自分の立場で考えてくれる弁護士を捜す「方法」を知っているか、が、現代社会を生きるにあたっては極めて重要になってきます。

デンゼル・ワシントン主演の映画『ハリケーン』をご覧にならればわかる通り、多くの黒人は、刑事裁判の初期段階で、この「方法」の知識を持っていません。それで、官選弁護人のおざなりの「弁護」で刑を言い渡されています。

それで極刑に処せられたのは今回が最初ではないのです。詳しくは、http://www.fujinaga.org/ でエッセイで書いておりますが、死刑は間違っているとして死刑囚を全部恩赦した州知事だっているのです。

ただ、テキサス州は違う。この州は死刑囚執行の数で群を抜いています。(多くはジョージ・W・ブッシュ知事時代の執行)。

こんな野蛮なことはやめさせましょう。

フランシスの最後のことばは"No"。

わたしはまた在りし日のゲイリー・グラハムの姿を思い出してしまいました。今夜は眠れそうにありません。

ジャズのないニューオーリンズ

復興されたニューオーリンズからジャズが消えるかもしれない。

そのような危惧が聞こえ始めた。そう語ったのは、ジャズ一家といて有名なマルサリス家のジェイソン・マルサリス。彼はこう述べている

「ニューオーリンズの音楽とは、そこに生きている人びとのことを語ったものなんだ。これで古い家は取り壊さなくちゃならなくなってしまった。そうすると、水が消えてなくなると同時に、この地の文化も消えてなくなるかも知れない」。

ある文化史家は、ヒップホップの精神とはジャズの精神と同じだと規定している。ストリートの音、それこそ、これらの音楽文化の核にあるものだから。

もしニューオーリンズ再開発が、観光業と大規模商業施設誘致に終始すると、ジャズの文化を育んだ裏通りalleyが消えてしまう。そうなると、ニューオーリンズはもはやニューオーリンズではなくなる。

昨日より、ビジネス関係者を中心にニューオーリンズへの立ち入りが許可された。ビジネス先導で復興が行われると、まちがいなくalleyは消えていく。(ちなみに、ナット・ヘントフもそう言っている)。

そうなるのを避けるためには、復興がかつてその地に住んでいた人のため立案され実行に移されるように監視していくことだろう。

少なくとも、いまこの約200年間で初めて、この街から音楽、音が消えた。ネーギン市長ーー連邦政府の対応の遅さに苛立ち、退去命令を出す会見で泣き崩れた人物ーーは、来年のマルディ・グラは予定通り行いたいと語り、「凄い」awesomeジャスのパレードでその祭りを締め括ろうと声を上げている。

ジャズが生きるにはalleyが必要だ。いまはネーギン市長を信じたい。

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