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「多幸感」が過ぎ去って Part 2: On Asylum -- Cuba and Haiti

バラク・オバマは、政権発足直後に、二つの大統領行政命令を発布した。

ひとつは、キューバのグアンタナモ米軍基地にある秘密捕虜収容所(拷問が行われ、人身保護令状の埒外にあるということで国際人権団体が激しく抗議していた施設)を閉鎖すること。そしてもうひとつが、アメリカに親族のいるキューバ人のアメリカへの渡航、またキューバに親族のいるキューバ系アメリカ人にキューバへの渡航を許可し、国交正常化に向けた大きな一歩を踏み出したこと。わけても後者は、キューバを「悪の枢軸」と名指しし、強硬路線をとっていたブッシュ外交からの大きな離脱を示した。

卑俗な表現で気がひけるが、そのときのわたしの心境は「アドレナリンが噴き出してきた」といったところだった。というのも、前年キューバへのアメリカからの渡航を試みて断念した経緯があったからだ。アメリカにとって、キューバは遠い隣国なのである。

ところが「対テロ戦争」がオバマの思う通りに進まず、アフガンには兵が増派される事態。内政は医療保険改革でどんずまり。キューバ政策に関しては前に進んでいる様子がまったく見られなかった。

ところで、キューバからの「難民」に対して、アメリカ政府はきわめて寛容・寛大に「亡命者」としての政治的庇護 politial asylum を賦与するのに対し、ハイチからの「難民」にはそうではない、彼ら彼女らは「不法滞在者」として訴追されるという話はご存じだろうか。

カリブに浮かぶ二つの美しい島、それを統治してきたのは、いわゆる「独裁者」である。ところが、アメリカは、社会主義的独裁者には激しい敵意で立ち向かうのに対し、(開発)資本主義的独裁者(i.e., マルコス元フィリピン大統領、ソモサ元ニカラグア大統領、グエン・バン・チュー元南ベトナム大統領、そしてアメリカに反旗を翻す前のサダム・フセイン、さらにはハイチのデュヴァリエ父子)には極めて寛容だ。政治的庇護権賦与がもつ、政権批判の意味を最大限に活用しようとしているのが、そこには窺える。

ハイチ人は、このイデオロギー上の問題に加えて、アメリカに住み続けることが難しくなっている。なぜならば、ハイチからの夥しい画像がはっきり示しているように、彼ら彼女らはまぎれもなく「黒人」だからである。対し、マイアミなどに行けばすぐにわかるが、アメリカで市民権を得ようとしているキューバ系と言えば、そのほとんどの人の肌の色は「白い」。

いま、そのハイチに対し、アメリカは人道的観点から大規模な救済活動を行っている。その行為はいくら賞賛しても賞賛しきれない。そのことを踏まえてなお且つここで言っておきたい。緊急事態が過ぎ去ったあとのアメリカに求められるのは、政治的な決意である。キューバの扱いもハイチの扱いも、共に「正常」に戻すこと。

オバマ政権、最初のダッシュはすばらしかった。そのときの勢いが戻らないと、正直、2012年、リベラル票が離反するような気がする。

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2010年02月07日 17:29に投稿されたエントリーのページです。

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