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2005年12月 アーカイブ

2005年12月12日

リチャード・プライアー死去

20051212pryor.jpg1960年代後半から1980年代にかけて活躍した黒人のコメディアン、リチャード・プライアーが死去した。享年65。またひとり、公民権時代を生きた世代の黒人著名人が亡くなった。

ここのブログで、ビル・コスビーのヒップ・ホップに対する批判を紹介したことがある。プライアーは、コスビーとは異なり、人種主義を赤裸々に描くことで人気を博したコメディアンである。1974年に発売された彼のコメディを録音したレコードのタイトルは、コスビーが嫌うことばを使ったもの、『あのニガーはクレイジーだ』である。

そんな彼はこんなことを言っていた。

最初のブラックスプロイテーション・ムービーが現れた頃:
「映画に行って、黒人のヒーローが観たくてたまんないんだ。そのうち、テレビの画面にも黒人のヒーローが映し出されると思うよ。あっ、ほら、空を見ろ。黒いカラスがいる。いや、まちがえた、コウモリだ。いやいや、ありゃ、スーパー・ニガーだ。高いビルもひとっ飛び、臓物(チトリン)の入ったボールも一口で丸呑み」

常日頃、黒人ゲトーでみかける人びとのことをコメディで語り、テレビや映画で演じ、彼は議論の的になっていた。そんな彼はこんなことも言っている。

「真実っていうものは笑いを誘うものなんだ。だけど、人びとはそんな真実を恐れているんだ。この世界でいちばん悪いものは嘘。だから、芸術とは真実を語る能力のことを指す。特に自己了解についての真実を語る能力のことをね」。

ここまで書いて、なぜだか2Pacのことが頭に浮かんだ。
そして、マルコムXのことが…。

【緊急!】署名をお願いします

土曜日の朝日新聞でも取りあげられていたのでご存じの方も多いだろうが、アフリカ系アメリカ人のギャングのなかでも最大の規模をもつCripsの創始者の一人、スタンレー・トゥーキー・ウィリアムスの死刑執行のときが迫りつつある。

このブログでも、さらにはhttp://www.fujinaga.org/の方でも、たびたびアメリカの刑事裁判の人種的階級的不平等性に触れてきたし、これまで何度も署名を訴えてきた。再度お願いしたい。支援団体がいま、最後の努力をしています。こちらで署名をお願いします。

なぜ署名をお願いするのかというと、それは彼は単なる「極道」thugではないからだ。

1979年、ロサンゼルスにあるセブンイレブンの前で殺人事件が起き、そのときに使用されたショットガンがトゥーキーのものだと判明したという物証が決定的な根拠となり、彼は死刑を宣告された。凶悪なギャングの幹部だったということを鑑みると、「当然」と考える人もいるだろう。

しかし、その後の彼は、「模範囚」となり、青少年に対しギャングに加わることの危険性を訴えるエッセイを著すなど獄中から社会活動を開始、ノーベル平和賞にノミネートされるまでになった。

たしかに犯した罪は償わなくてはならない。しかし「死刑」という刑罰は、間違って人命を合法的に奪うという危険性をもつ一方、犯罪被害者にとっても「納得のいく」解決策とはなっていない。たとえば、今回のケースにおいても、セブンイレブンで殺された人物の実兄は、こう述べている。

「[終身刑への減刑を求める運動の]結果がどうであれ、死刑執行に決められた火曜日がつらい日になるのはまちがいありません。結局、得するものは誰一人としていません。もし彼が特赦を受けたならば、それに悲しむ人がいるでしょう。他面、そうでなかったならば、彼の命が消されたことでとても落ち込むことになるでしょう」。

さらに、獄中での彼の「回心」を鑑み、ジェシー・ジャクソン師はこう述べている。
「罪を贖う行為の価値を過小評価することになれば、彼のこの社会への貢献を過小評価することになれば、そしてまた回心の証拠をはっきりと示したのにもかかわらず周りが変化しないということになれば、シニシズムの大波が押し寄せてくることになります、そのことを考えると怖くなります」。

彼の支援者のなかに、かつてCripsのメンバーだったヒップ・ホップスター、スヌープ・ドッグもいる。ここではっきりしておきたいことは、そんな彼の支援団体が求めていることは、彼を放免することではない、ということだ。残虐な刑罰、死刑を中止し、終身刑に減刑するように求めているだけである。現在、カリフォルニア州議会は、死刑を廃止することを討議中である。もしその法案が可決されたら、彼の刑の執行はどう説明されるのだろうか?

世界に拡がる支援者を知り、それでもトゥーキー・ウィリアムスは、もし刑が執行されるとなると、「独り」で刑を受けると言っている。殺人に関しては、無罪を主張しているのだが…

恩赦の権限を握っているのは、アーノルド・シュワルツネッガー知事。こちらで署名をお願いします。死刑を止めさせましょう!。協力してください!。

【緊急!】カリフォルニア州最高裁、恩赦を拒否

20051212tookie.jpgトゥーキー・ウィリアムスの速報。

カリフォルニア州最高裁が恩赦の要求を拒否。

これでシュワルツネッガー州知事の「英断」のみが最後の望み(ちなみに、全部の死刑囚を終身刑に減刑した例がイリノイ州にはある、ほんの3年前の話だ)。

一方、AOLワーナーが運営しているサイト、Black Voicesの世論調査では、55%が恩赦に賛成、反対は28%。もちろんこのサイトを訪れるものの大半が黒人ではある。他面、ここのところ自分が提案した住民投票が否決されるなど、支持率の低下に悩むシュワルツネッガー知事が、政治的にこの件を利用する危険がある。彼は保守的共和党、死刑支持論者だ。

州知事がネットでご意見番を開いています。抗議の声を響かせましょう。ご協力をお願いします!。

なおここにアップした写真が、現在サンクエンティン刑務所の死刑囚棟にいるトゥーキーの姿である。

2005年12月13日

【緊急!】あと11時間半しかありません

トゥーキー・ウィリアムスに関する速報。

シュワルツネッガー州知事がトゥーキー・ウィリアムスに恩赦を与えることを拒否しました。あと11時間半しかありません。

抗議の署名をこちらでお願いします。

なおスヌープ・ドッグがABC放送で行った特赦をもとめる会見はネットで配信されています。

トゥーキー・ウィリアムスは処刑されました

20051213tokie.jpgトゥーキー・ウィリアムスは、カリフォルニア州政府によって、アーノルド・シュワルツネッガー知事の支持を受け、現地時間13日0時53分に、合法的に殺害されました。

署名にご協力いただいた方々、どうもありがとうございました。

こんなこと、せめても、これが最後になれば…。

この事件については後日、詳報を記します。

もう2度とシュワルツネッガーの映画は観ません。

2005年12月22日

Thugの涙

20051212snoop.jpg死刑延長の署名をお願いしましたトゥーキー・ウィリアムスの葬儀が行われました。

くやしくて仕方がありません。

右の写真は、トゥーキーの亡骸を前にしたスヌープ・ドッグの姿です。

彼は、トゥーキーのことを「俺にとってのマーティン・ルーサー・キングだ」と語っていました。少なくとも、今、スヌープがthugではなくラップスターであるのはトゥーキーがいたからです。

いったい誰だトゥーキーを殺したのは!

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